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AFICS-Japan
オンライン対談
「外交官と国連で学んだ教訓と混迷する国際状況について」
山本忠通大使(元国連アフガニスタン支援ミッション事務総長特別代表)
長谷川祐弘 AFICS-Japan会長
2024年5月31日(金) 20時~21時30分(日本時間)
サマリー記録
山本忠通大使は、日本政府代表としてアフガニスタン・パキスタン支援を行い、のちに国連事務総長特別代表として国連アフガニスタン支援ミッションの長であった経歴を持つ。アフガニスタン問題に日本の外交官として関与した時と、国連事務総長特別代表として国連サイドからかかわった時では、同じ問題に対する視点が変わったかどうかと長谷川祐弘会長は質問した。
山本大使は、外務省でアフガニスタン問題を扱っていた時と、国連に入って同じ問題にかかわった時では違っていたと答えた。日本政府は明確に国益という観点からアフガニスタン支援をとらえていた。日本はアフガニスタンを支援する主要国のグループの一員として、主に開発分野を担当していた。この主要国グループで主導権を握っていたのは米国であったが、日本も特に開発分野では、Rule Maker(政策立案者)の役割を担っていた。一方、国連の場合は戦略や政策決定をするのは安全保障理事会なので、事務総長特別代表の役割は(かなりの自由裁量の余地はあったものの)決まった政策をきちんと実施することであった。
国連事務総長特別代表として日本政府を見た時、日本は国連の場でアフガニスタン問題に対してペンホールダーとして活躍したが、政策的イニシアティブをとることはなかった。日本政府はカンボジア問題や、東ティモール問題など、積極的に国連の場で政策決定にかかわりイニシアティブをとった例もあるが、反面その他の多くの分野では積極的に関与しないことが多い。なぜなのか? これは日本の外交政策の基本にかかわることだと山本大使は考えている。日本の外交政策の基本原則は①「国益」であるが、それだけではなく日本の国益の追求を超えて、今や②「国際秩序の構築」は避けられない課題となっている。
この後のディスカッションでは主に「国際秩序の構築」における日本の外交政策について議論が集中した。
日本がリーダーシップをとった例として「人間の安全保障」が取り上げられた。
日本がリーダーシップをとる可能性のある例として①「平和、特に軍縮」、②「人間の尊厳」が取り上げられた。
日本がリーダーシップをとるべきなのにリーダーシップをとることが出来ていない例として、「ミヤンマ―情勢」や「核兵器禁止条約会議」が取り上げられた。
「国連外交」の重要性の再確認が必要である。かつて外務省に存在した国連局が廃止されたのは残念なことであった。
国連の現場での日本のより幅広い関与との関連で、専門調査員制度を含む外務省の人事政策についても議論が及んだ。
最後に、長谷川会長は日本の政治家がもっと国連や国際秩序の構築についての認識を高めることができるように、国会議員のグループと定期的な会合を持つ活動を行っていることを報告した。
以上
佐藤純子
2024年6月12日(記録作成)
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