京都芸術大学
(付置機関)京都国際平和構築センター
第1回「評議員 会議」
日時:2022年5月19日(木)
場所:京都芸術大学 大会議室
明石 康 京都国際平和構築センター評議員会名誉会長
元国際連合事務次長(人道・軍縮担当)、元国際連合事務総長特別代表(カンボジア・旧ユーゴスラビア担当)
明石氏は最初に本日会議が行われた京都芸術大学の馬蹄型の会議場の美しさと、またそれは国連安全保障理事会の会議場に似ているが、より素晴らしいものであると述べた。明石氏は、KPCの名誉会長として、また尊敬する同僚たちを代表して、近年、国連で最も才能と経験のある指導者の1人であるアトゥール・カレ氏を、KPCにお迎えできることを光栄に思うと述べた。明石氏は、様々な場所で国連の仕事を組織する方法についてカレ氏のすばらしい知識を聴きたいと切望している一人である。 明石氏は、アジアやヨーロッパにおいて世界的危機が訪れている時代に、日本が平和構築と平和維持の分野で国連に何を提供できるか、カレ事務次長の意見を聴くのを楽しみにしていると述べた。さらに明石氏は、今日の議論が、京都芸術大学で行われていることについても述べ、ここは芸術を専門とする大学であるが、芸術は文化や文明の柱石であり、経済や外交など他の学問分野にとっても欠かすことのできないものであると指摘した。また国連は、平和維持や平和構築の面でも、大切な仕事をしてきた。国連平和維持活動は1948年に中東において、1949年にインドとパキスタン間のカシミール紛争において始まった。国連は、おそらく、調停や交渉などを含む平和創造の分野を探求していくべきであろう。これは現下のウクライナにもあてはまると述べた。
最後に明石氏は、1992年にカンボジアにおける国連平和維持活動に日本が初めて参加してから、あと数週間で30周年を迎えることなる、その意味でもカレ事務次長の思慮に富むご意見をお聴きしたいと述べた。
京都国際平和構築センター 評議員
山本 忠通 評議員
元国連事務次長・事務総長特別代表(アフガニスタン担当)・元ユネスコ大使
山本氏は最初に、カレ氏の提案が、日本が現実的にできることと、平和維持活動への日本の貢献の実情を、深く理解した上での、提案であることを評価した。また山本氏は、平和維持活動は進化しており、自らの直接的貢献に加え、他の国の能力を高めるためのさまざまな方法を提供することも必要であると述べた。この意味で、日本の高い技術力、社会基盤、そして「母子健康手帳」などの医療制度は、国際平和協力活動を更に支援する機会を提供するものである。 山本氏は、カレ氏に次の2つの問題をを提起した。
国連の活動をより効率的にするために、日本や他の国ができることはないのか。 また、この会議は京都芸術大学で開催されていることに関連し、国連として、芸術分野での活動でして平和意識を高めることはできないか。最後に、日本政府が国会の支持を得て、カレ氏の提言を真剣に受け止めることを期待したいと述べた。
神余 隆博 評議員
関西学院大学教授・日本国連学会理事長・元国連大使・元ドイツ大使
神余教授はまず、カレ氏に2つの質問をした。なぜ、平和維持のあり方が大きく変わり、大多数の平和維持活動要員が途上国出身者になってしまったのか。 平和維持活動は途上国だけの仕事なのか、それとも日本のような国は技術支援や後方支援で協力すべきなのか、つまり先進国のPKO参加がより積極的になるには、どうすればいいのかと 質問した。
もう一つは、ウクライナを助けるために国連は何ができるのか。停戦がない状況では平和維持活動は実現性が低いので、国連はあまり力を発揮できないようである。
(日本語 後半)大野木氏は、芸術と国連は遠いと言われるが、国連は芸術の宝庫である。ユネスコ憲章は、人の心に戦争の砦を築かないように、というが、そのためには、芸術を狭く考えない方が良い。交渉はThe Art of Negotiationsと呼ばれる。これで問題を解決する。ドイツでは、文化は政治を作るが、政治は文化を作れないという諺もある。それらも含め、芸術を広く捉えれば戦争を取り除くツールになる。
西田 恒夫 評議員
元外務省外務審議官・元国連大使・元カナダ大使
京都芸術大学は平和のために果たす役割を話した。西田氏は、第一に、第二次世界大戦後、日本は国連と自由主義・多国間民主主義のシステムを真に享受し、支持している数少ない国の一つであり、それは同時に複雑な理由でもあると述べた。また、京都芸術大学の学生に国連について尋ねると、彼らは国連と、それらが達成できること、例えばウクライナの戦争を終わらせることなどについて、非常に楽観的な考えを示すと付け加えた。
しかし、そのような楽観的な意見であっても、拒否権は常任理事国が権力を独占しているという否定的な意味合いを持つことがあること、第二にPKOは若者の間で最も目につきやすく、何となく刺激的な活動で、青いヘルメットが権力の象徴として残っていることを強調する必要がある、と述べた。さらに、西田氏は、国連は優れた人材と資格と資金があれば十分に機能し、今こそハイテク資源を提供すべき時であるとの見解を示した。ウクライナの危機的状況を見るにつけ、勝利のために武器、技術、情報が必要であることがわかる、と述べられた。
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